疾患と治療方法 / 泌尿器科疾患の解説

男性不妊と性機能障害

男性不妊について

2年間正常な性生活を営んでいても、妊娠しないカップルを不妊症といいます。100組のカップルがいると、最初の1年目で80組のカップルが妊娠し、次の1年で10組のカップルが妊娠します。つまり、残る10組(10%)のカップルが不妊症ということになります。最近では1年間妊娠を希望しても妊娠しないカップルを、不妊症と定義するようになってきました。WHO(世界保健機関)による、不妊症の7000以上のカップルの調査によると、不妊症の原因は、41%が女性のみ、24%が男女ともにあり、24%が男性のみ、11%が原因不明となっています。つまり男性側に原因があるのが48%もあるのです。これは一般的な認識にくらべ高い数値ではないかと思われます。このことから、不妊症の検査はカップルで受けることが大切と言えます。さらに言えば、検査の簡便性から男性側に積極的に検査を受けていただきたいと思います。診察では、まず問診・外陰部の診察・精液検査を行います。これで異常がある場合には、ホルモン検査・染色体検査(いずれも血液で検査ができます)・超音波検査を行います。これらの検査でどこに異常があるのかを判断します。治療可能な疾患としては、精索静脈瘤・閉塞性無精子症があります。手術により、精索静脈瘤では精液所見の改善が得られ、閉塞性無精子症では精路の開通が期待されます。また、ホルモンに異常がある場合にはホルモンの補充を行うこともあります。しかし、残念ながら自然妊娠に至らない場合には、人工授精・体外授精・顕微授精などの生殖補助医療を行う選択肢があります。特に顕微授精の進歩と普及は目覚しく、男性不妊症の治療が劇的に変化しています。現在では高度の造精機能障害であっても、精巣から直接精子を採取しての顕微授精がかなりの確率で可能となっており、当科でも産婦人科の不妊症グループとの協力体制のもと積極的に治療を行っています。

性機能障害について

性機能障害にはいろいろな面がありますが、最も問題になるのは勃起障害です。現在では勃起障害は、英語のerectiledysfunctionの略でEDという言葉も使われるようになっています。勃起障害とは,満足な性行為を行うのに十分な勃起とその維持ができない状態を指します.日本でEDと考えられる人は約1000万人いるといわれています。EDは加齢に伴い増加しますが、高齢者でも勃起に対する欲求は大きく、高齢者の生活の質を考える上でもEDは大きな問題のひとつであるといえます。EDの治療はシルデナフィル(バイアグラ)が発売されてから大きく変化しました。バイアグラが第一選択薬となり、バイアグラで効果のない症例・バイアグラを飲んではいけない症例に対する治療が課題になっています。診察では、問診・外陰部の診察・血液検査・ホルモン検査を行います。基本的な治療としてはまず、バイアグラを投与します。これで70~80%の効果が得られます。これ以外の治療法としては,血管を拡げる薬の海綿体への注射や、陰圧式勃起補助具の使用、陰茎プロステーシス移植手術などを症例に応じて選択します。

男性更年期について

最近話題になっている病気のひとつに、男性更年期があります。これは加齢に伴う男性ホルモン低下に起因すると思われる、性欲・勃起力の低下、疲労、憂うつ感などの症状がみられる病気です。抗うつ薬の内服や男性ホルモンの補充でかなり症状が改善されます。今後は男性更年期の診断と治療にも力をいれていきたいと考えています。