疾患と治療方法 / 泌尿器科疾患の解説

悪性腫瘍と抗がん剤による化学療法

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泌尿器科の悪性腫瘍と診断され、主治医の先生から抗がん剤の投与を勧められ、悩んでいる人もいらっしゃると思います。また抗がん剤と聞くと、それだけでも副作用が強いとお考えの方も多いと思います。ここでは泌尿器科の悪性腫瘍と抗がん剤(ホルモン療法は除く)について説明したいと思います。

抗がん剤の使用目的

治癒目的、再発予防、延命目的、症状の緩和、が挙げられます。実際には悪性腫瘍の種類によって抗がん剤の有効性や使用目的は違います。次に泌尿器科の悪性腫瘍の違いによる抗がん剤の有効性について説明したいと思います。

精巣腫瘍

肺やリンパ節などに転移があっても、化学療法によって完全に治すことが可能です。転移している部位や腫瘍マーカーの数値によっても違いますが、一般的には70%以上治すことが可能です。

膀胱がん

肺、リンパ節、肝臓や骨など多臓器に転移している場合の奏効率は(ガンが50%以上一時的に縮小した場合)約60%前後です。完全に治る可能性は少ないですが、がんを一時的にコントロールし生存期間を延長することが期待できます。

前立腺がん

転移がある場合の治療の第一選択はホルモン療法です。ホルモン療法が効かなくなったホルモン抵抗性の前立腺がんの場合に抗がん剤の投与が検討されます。骨の痛みなど症状の緩和ができることがあります。一部の抗がん剤については生存期間の延長も報告されていますが、長期はあまり期待できません。

腎細胞がん

治療効果はほとんど期待できません。インターフェロンやインターロイキンなど他の治療を選択するべきです。

悪性腫瘍の種類によって使われる抗がん剤は違います。当然使用する抗がん剤について副作用が違います。現在は一種類の抗がん剤ではなく数種類の抗がん剤を組み合わせた多剤併用化学療法が一般的です。
最近新しい抗がん剤が発売されており、泌尿器科の悪性腫瘍でも効果が確認されています。当科で行っている併用化学療法と新規抗がん剤について説明します。

膀胱がんまたは腎盂尿管がん

多臓器に転移している場合や、術後の再発予防のためにシスプラチンを中心とした併用化学療法を行っています。一般的にはM-VACといってメソトレキセート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチンの4種類の抗がん剤を使用しています。最近ゲムシタビンやパクリタキセルなど新規の抗がん剤が膀胱がんでの有効性が報告されています。当施設ではM-VACが無効であった症例やM-VACを使いにくい症例についてはゲムシタビンとパクリタキセル、またはシスプラチンとゲムシタビンによる化学療法も行っています。とくにシスプラチンとゲムシタビンによる併用化学療法はM-VACとほぼ同等の効果がえられ、副作用が少ないと考えられています。日本ではまだ一般的ではありませんが、当大学では2002年より施行しています。

前立腺がん

化学療法は第一選択ではありません。一般的にはホルモンが効かなくなったホルモン抵抗性前立腺がんが対象になります。この場合には経口のリン酸エストラムスチンとエトポシドを併用した化学療法と経口のエストラサイトと点滴で行うドセタキセルを併用した化学療法の二種類をおこなっています。疼痛の緩和や後者では短期間ですが、生存期間の延長の可能性も考えられます