疾患と治療方法 / 泌尿器科疾患の解説

腎腫瘍

腎癌とは

腎臓の尿細管と言われる部分から発生する腎実質の腫瘍です。腎腫瘍には悪性腫瘍である腎細胞癌のほかに良性腫瘍である腎血管筋脂肪腫、オンコサイトーマといった腫瘍などもあります。

原因

肥満,喫煙,高血圧,などの生活習慣や、有機溶媒,カドミウム,アスベスト等の化学物質への曝露などが危険因子としてあげられ、長期の血液透析患者さんにも発生率が高いことが知られています。近年ではがん抑制遺伝子「VHL遺伝子」の異常も原因の一つとして考えられています。

症状と診断

初期の段階では多くは無症状です。近年,検診や人間ドックにおける腹部超音波検査の普及,さらに糖尿病や消化器系腫瘍などに対し腹部CT 検査がとられる機会が増加したため,偶然に腎臓に腫瘤性病変を指摘される機会が増加しています。いわゆる古典的3主徴(側腹部に腫瘤を触れる、側腹部の疼痛、血尿などの症状)はまれですが腫瘍が大きくなった場合に呈することがあります。進行の早いものでは発熱や貧血体重減少などの兆候があります。診断には腹部CT(原則的には造影剤を使用)が最も有効です。

治療

根治的治療として手術療法が基本となります。腫瘍径が小さい場合(4cm以下)では腎部分切除術を、それ以上では腎全摘除を行います。当科では部分切除術には積極的に腹腔鏡下手術を行っており、腎摘除術では腹腔鏡下手術もしくは小切開手術を行っております。どちらも体への負担が軽く術後の回復が早いのが特徴です。転移がみられる場合でも可能ならば腎摘除をした方が、予後が良いことが知られております。肺やリンパ節などに転移が見られ切除が不可能な場合にはがんの増殖を抑える分子標的治療が現在最も効果の高い治療法です。2015年4月現在 本邦では6種類の分子標的治療薬が認可され使用されています。病変を増大させず延命効果が期待できる治療薬ですが、高血圧、倦怠感、下痢、皮膚病変など様々な副作用があり治療が継続できない場合もあります。

腹腔鏡下腎部分切除術:腫瘍切除後 欠損部を修復