疾患と治療方法 / 泌尿器科疾患の解説

腎移植

腎臓の働きと腎不全

腎臓の働きには、体内の余分な水分や尿毒素などの排泄だけではなく、体内の酸性度や電解質濃度の調節、血圧の調節、赤血球を作る命令を出すホルモンの分泌など、非常に重要な要素があります。何らかの原因で腎臓の働きが低下し、機能が廃絶してしまうと、1週間程度で生命が危なくなります。このような状態が“末期腎不全”です。したがって末期腎不全に陥った患者さんが生きていくには腎臓の機能を補う治療が絶対的に必要となります。その治療法のひとつとして、“透析療法”(血液透析あるいは腹膜透析)がありますが、上で述べたような複雑な腎臓の諸機能を完全に補うことが出来ないのが現状です。“透析療法”はあくまでも体内の余分な水分や尿毒素などの排泄の一部を行っているだけの代替治療であり、長期にわたって施行してゆくと、いろいろな合併症が出現します。

腎移植

“腎移植”では術後に移植された腎臓が十分働くようになれば、上記の様々な腎臓の機能が発現し、患者さんは長期間にわたって健康な人と同等の生活が送れるといる大きな利点があります。また、末期腎不全患者さんは腎移植を受けるほうが透析で生命を維持するよりもずっと長生きが出来るという結果が得られており、そのため、最近では腎不全に陥いられたら、透析を経ずに腎移植を受けられる患者さんも増えてきております。さて、腎移植には腎を提供して下さる方がご家族の場合の生体ドナーからの腎移植を生体腎移植、亡くなられた方からご提供いただいた腎を移植する献腎移植と呼んでいます。最近の免疫抑制剤などの進歩によって、腎移植の成績は非常に良くなっており、移植1年後の生着率は生体で90%以上、献腎でも90%近くとなっています。

生体腎移植

健康なご家族のなかから相性(医学的には組織適合性検査)の良い方から片方の腎臓を提供して頂いて、移植手術を行います。なお提供した方はもう片方の腎で十分生きていけます。手術は予定手術となります。

献腎移植

献腎移植とは、生前に死後の臓器提供を承諾していた方が腎臓病やがん以外の病気でなくなられた際に、ご遺族の承諾を得て腎臓の摘出を行って腎不全の患者さんに移植することを言います。欧米の献腎移植は脳死移植で行われることが普通ですが、日本では心停止後に提供される腎移植(角膜と腎臓移植に関する法律に則っています)が、大半を占めています。わが国でも脳死移植法の成立後、脳死にて提供された多臓器移植の一部として腎移植が行われるようになりましたが、その数はきわめて少数です。

山梨大学医学部附属病院での腎移植

さて山梨大学医学部附属病院では、1983年の開院(当時は山梨医科大学医学部附属病院)と同時に腎移植を開始し、これまでに50例以上の患者さんに腎移植を行っております。最近では、生体腎移植ドナーの手術に腹腔鏡を用いた低侵襲手術を導入し、ドナーの方の負担を少なくするようにしています。山梨県内での腎移植施設は、山梨大学医学部附属病院だけであり、腎移植外来の実施も当院のみです。このため、腎移植に関することには全て対応させていただいております。近年、慢性透析患者数は増加の一途にあり、2003年末には、全国で237,710人、山梨県では1,745人となっております。これに対し腎移植件数が伸び悩んでいるのが現状です。その一因として、腎移植に対する情報不足も考えられます。当外来では移植に関することであればどのようなことでも、連絡をいただければ、相談に応じています。これにより、一人でも多くの方が腎移植の恩恵を受けられることを願っています。

腎移植外来

実施日 毎週火曜日、木曜日午前
担当 武田教授及び泌尿器科医師
内容 腎移植後の患者様の経過観察 

月1回程度受診していただき、診察、採血、X線検査、処方等を行っています。拒絶反応や合併症の有無をチェックしています。

献腎移植希望者の登録手続き

希望者には、透析主治医よりの必要書類を持って、受診していただき、腎移植の説明、採血(HLA検査用)を行っています。日本臓器移植ネットワークへの登録は、山梨臓器移植推進財団の協力のもとに行っています。当外来受診のみで、登録手続きができます。

腎移植に関する説明

実際に腎移植を希望される方は勿論、腎移植に興味がある方、腎移植について詳しく知りたい方等、移植に関することであればどのようなことでもご相談に応じています。