泌尿器科専門医を目指す皆様へ

講座紹介

診療・研究テーマ

1.下部尿路機能障害の臨床・基礎研究

2.泌尿器悪性腫瘍の臨床・基礎研究

3.低侵襲外科治療法の開発・普及

4.小児泌尿器科の臨床・基礎研究

5.女性泌尿器科

6.腎不全治療・腎移植

7.男性不妊・男性機能障害

 

概要

本講座は、1983年に上野 精先生(山梨大学名誉教授、元山梨医科大学副学長)を初代教授として誕生しました。1999年には第2代教授として武田正之先生が着任し、現在は山梨大学医学部附属病院長、山梨大学副学長として活躍されています。武田正之先生は、2011年からは、日本排尿機能学会理事長、国際禁制学会(ICS: International Continence Society)理事となり、わが国の下部尿路機能障害研究の第一人者であります。教授在任中の2010年には第17回日本排尿機能学会を、2015年には日本泌尿器科学会東部総会を開催し、日本国内はもちろん海外からも多くの参加者がありました。また、国内外での多くの学会での研究発表、論文発表を行ってきています。2009年には、望月 勉医師(現 非常勤講師)が日本泌尿器科学会賞を受賞し、2011年には中込宙史学部内講師が、欧州泌尿器科学会で「ベスト・ポスター賞」を受賞しました。2016年には井原達矢学部内講師が、同じく欧州泌尿器科学会で「ベスト・ポスター賞」、日本排尿機能学会で河邊賞を受賞しています。2017年には下部尿路機能研究の最高峰であるDiokno Lapides Essay ContestでGrand Prizeを受賞しました。2019年には、井原達矢学部内講師、望月孝規医師、志村寛史医師の3人が日本排尿機能学会の各部門すべてで学会賞を受賞しています。このように、国内はもとより海外でも活躍しています。

2020年4月には第3代教授として三井貴彦が就任しました。山梨大学泌尿器科学講座では、悪性腫瘍(腎、膀胱、前立腺、精巣など)、下部尿路機能障害、内視鏡外科(ロボット支援手術、腹腔鏡手術など)、小児泌尿器、女性泌尿器、腎移植・透析、内分泌外科、尿路感染症、不妊症、性機能障害、尿路結石などの幅広い分野を扱っています。上野 精先生、武田正之先生が築かれた伝統により、現在では山梨県における泌尿器科疾患の診療拠点を形成しています。今後も山梨県および日本における医療の充実のために、今まで以上に診療、研究、教育を充実させて地域の中核となり、この地域から世界に通じる人材を育成していきたいと考えています。

 

モットー

教室のモットーは「明るく楽しく良く学ぶ」、医療のモットーは「患者さんの満足できる質の高い医療」、研究のモットーは「Original, Simple and Understandable」です。教室員の育成方針は、「Surgeon Scientistを目指せ」です。

 

臨床

山梨大学医学部附属病院5階北病棟にある入院病床、泌尿器科外来、血液浄化療法部門の診療を担当しています。

 

1.下部尿路機能障害

下部尿路機能障害では、正確な診断と適切な治療が求められます。火曜午後と水曜日午後に尿流動態検査を行い、一般泌尿器科医にとって難度の高い下部尿路機能障害患者を対象に治療・尿路管理を行っています。

二分脊椎などでは、幼少期より尿流動態検査を積極的に行い、最適な尿路管理を行います。治療抵抗性の過活動膀胱に対しては、ボツリヌス毒素の膀胱壁内注入療法や仙骨電気刺激術を行っています。前立腺全摘除術後の高度な尿失禁に対しては、人工尿道括約筋の埋め込み術も施行可能な施設です。

 

2.ロボット支援手術、腹腔鏡手術、ミニマム創手術

武田病院長は、1992年に世界で始めて腹腔鏡下での副腎摘出手術に成功した先駆的な泌尿器外科医です。現在は、小児に対する腹腔鏡下手術、腎腫瘍などの各種泌尿器科悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術、副腎疾患に対する腹腔鏡下副腎摘除術、骨盤臓器脱に対する腹腔鏡下仙骨膣固定術、腎移植ドナーに対する腹腔鏡下腎摘出術など様々な腹腔鏡下手術を積極的に行っています。 近年では、さらなる低侵襲化と高度技術を目指して、2台のda Vinciシステム(Xi, X)によるロボット補助下手術も導入しており、ダビンチ手術の認定資格を所持した医師によって安全に手術を施行しております。現在では、前立腺全摘除術、腎部分切除術、膀胱全摘除術に対して行っており、今後骨盤臓器脱に対する仙骨膣固定術、腎盂尿管移行部狭窄症に対する腎盂形成術も行う予定です。

また、二酸化炭素を用いない低侵襲外科治療法であるいわゆる「ミニマム創手術」(小切開腹腔鏡補助下手術)継続して行っており、腹腔鏡下手術とともに認定施設となっています。

 

3.泌尿器悪性腫瘍治療

泌尿器悪性腫瘍の外科的切除術はもちろんのこと、進行性悪性腫瘍に対しては、各種化学療法、分子標的薬、免疫療法、放射線療法などを積極的に取り入れて、各種治療を組み合わせた集学的治療を行っています。前立腺癌では、診断のための山梨大学オリジナルのテンプレートを用いた生検方法を取り入れており、高い診断率を得ています。前立腺がんに対する小線源放射線治療法を、2011年から導入しています。また、標準治療で治療が困難な場合には、がん遺伝子パネル検査を行いがんゲノム医療も勧めています。

 

4.小児泌尿器科

先天性尿路奇形全般に対する形成術を行っています。幼児に対する尿道下裂形成術、精巣固定術をはじめ、腎盂尿管移行部狭窄症に対する腹腔鏡下腎盂形成術、非触知精巣に対する腹腔鏡診断と腹腔鏡下2期的固定術、低形成腎に対する腹腔鏡下腎摘除術などの低侵襲手術は積極的に行っています。

夜尿症患者に対して、デスモプレシン点鼻、アラーム療法などの治療を系統的に行っています。

 

5.女性泌尿器科

骨盤臓器脱、腹圧性尿失禁を中心とした女性泌尿器科を専門とした外来を、水曜日の午後に看護学科の谷口教授とともに行っています。骨盤臓器脱、腹圧性尿失禁は、骨盤底筋群の機能障害が関連していることから、骨盤底筋訓練やサポート下着を用いた保存的治療を積極的に行っています。保存的治療で十分な効果が得られない場合には、骨盤臓器脱に対しては腹腔鏡下仙骨膣固定術や経腟メッシュ手術を行います。今後はロボット支援手術として仙骨膣固定術を導入していく予定です。腹圧性尿失禁に対しては、メッシュテープを用いた尿失禁手術を行っています。

 

6.腎不全・腎移植

透析用動静脈内シャント造設術をはじめ、透析用動静脈内シャントの閉塞に対する各種のInterventional Radiology、生体腎移植における腹腔鏡下ドナー腎摘出術など、様々な治療を行っています。 抗体陽性例、血液型不適合移植、移植後早期FSGS再発例などのハイリスク症例に対しても積極的に腎移植を行い、また、山梨県内唯一の献腎移植施設として、心臓死・脳死の両者からの献腎移植にも取り組んでいます。

 

7.男性不妊・男性機能障害治療

男性不妊症、無精子症に対するICSI(卵細胞内精子注入療法)のためのMESA、TESAなどの精巣組織採取、閉塞性無精子症に対する顕微鏡下手術(MD-TESE)、男性機能障害や男性更年期に対する治療などを行っています。