疾患と治療方法 / 泌尿器科疾患の解説

副腎腫瘍

副腎腫瘍

副腎は左右の腎臓の頭側に存在する小さな臓器です。副腎では代謝、血圧や電解質の調節に必要なホルモンが分泌されています。ここに腫瘍が発生しホルモン分泌が過剰になると高血圧や高血糖など体に悪影響を及ぼす状態になります。副腎腫瘍には外層の皮質から発生する皮質腫瘍と内層の髄質から発生する髄質腫瘍があります。

副腎皮質腫瘍

クッシング症候群

糖質コルチコイドが過剰となり丸顔になったり肥満になったり精神症状や多毛症等様々な症状を呈する疾患です。免疫力の低下により感染症を合併しやすくなります.

プレクリニカルクッシング症候群

腫瘍から糖質コルチコイドが過剰に産生されているものの、上記のようなクッシング症候群に特徴的な症候がないものをプレクリニカルクッシング症候群といいます。しかし高血圧や高脂血症、高血糖などの代謝異常を合併する場合も多くみられます。

原発性アルドステロン症

アルドステロンが過剰に分泌されている疾患です。微小な病変であることも多く画像では判断できないため左右の副腎静脈からの血液を採取して(静脈サンプリング)左右どちらの病変か診断します。高血圧患者さんの10%にみられるといわれています。自覚症状がなくとも放置しておくと心血管障害や腎機能障害をきたすことがあります。

 

 副腎皮質がん

比較的稀な疾患ですが、手術で切除しきれない場合は予後が非常に悪く悪性度の高い疾患です。

 

 転移性副腎腫瘍

肺癌や腎癌、大腸癌などが副腎に転移する場合があります。

副腎髄質腫瘍

褐色細胞腫

カテコラミンという血圧を上昇させ脈拍数を早くするホルモンが過剰になっている状態です。著明な高血圧や動悸、頭痛、頻脈などの症状がみられます。

 

治療

当科では内分泌内科と連携して治療に取り組んでいます。内科で適切な診断がなされ手術が必要な場合には当科で主に腹腔鏡手術による副腎摘除を行います。当科の武田正之教授は1991年に世界で初めて腹腔鏡下副腎摘除術を行い、成功を収めました。以後も多くの手術を手がけてこられ日本でも有数の経験と実績を持つ術者のひとりです。武田教授はじめ当科スタッフは積極的に腹腔鏡下手術に取り組んできました。大きな副腎腫瘍や癒着が予想される例、副腎がんや転移性の副腎腫瘍についても十分に検討し適応があれば腹腔鏡下手術を行っています。切除不能な副腎皮質がんでは余命延長効果を期待してミトタンという薬物治療を行います。

腹腔鏡下手術所見 左 褐色細胞腫 右 転移性副腎腫瘍