お知らせ

澤田智史先生の海外留学報告書を掲載しました。

海外留学報告 Wake Forest大学再生医学研究所 20112013

                                                     山梨大学泌尿器科学講座 澤田智史 

   2011年から2013年の2年間、米国ノースカロライナ州ウインストン・セーラム市のWake Forest大学の再生医学研究所に留学しました。ウインストン・セーラム市は米国南部の小都市ですが、教会から発展した町でアメリカといってもヨーロッパの田舎のような印象を受けました。名前からお分かりのとおり、たばこで栄えた町です。治安も比較的よくのんびりしていました。

    この研究所では、腎臓や皮膚など30以上の臓器の再生を目指して多数の研究者ががんばっております。はじめに見学で説明を受けた際にびっくりしたのが、腎臓の再生のために腎臓の鋳型をコラーゲンで作って腎臓を破砕した細胞をいれて尿細管を再生させるプロジェクト、バイオプリンターとよばれる細胞を紙のようなコラ-ゲンにのせて「やけど」の治癒を促進させるプロジェクトで、内部の様子は映画のセットのようでした。所長のAnthony Atala先生は、泌尿器科医で世界ではじめて二分脊椎の女児に患者さん自身の細胞を利用した人工膀胱を移植しております。わたしも再生医療に関連したことがやれればと夢みておりましたが、大学院時代に研究していたことが虚血と排尿機能であり、指導教官のKarl-Erik Andersson先生も慢性虚血が原因の排尿機能障害に再生医療は現実的には治療とはあまり結びつかないとおっしゃっており、まずは生理学的実験の手技の勉強がはじまりました。わたしにとって本当に幸運だったのは、福島県立医大(現 日大工学部 排尿障害研究部門 准教授)の野宮先生とご一緒できたことです。先生に実験の手技だけではなく、臨床経験なども話していただき、医師が研究する意味についても考えさせられました。医師が研究するという意味は、同業の臨床医にとって何か役立つ情報を提供するもののはずで、そのためにはトランスレーショナルリサーチが重要だと考えるようになりました。

 なんとか無事に2年間を過ごすことができましたが、やはりとても短く、滞在中は論文は出せるのかどうか不安な毎日でした。ですが、長い人生において外国に住んでみるということは自分のこともまた違う視点でみる機会があるということであり、興味のある方はぜひとも留学をお勧めしたいと思います。

                               2014524

業績

Sawada N, Nomiya M, Hood B, Koslov D, Zarifpour M, Andersson KE

Protective effect of β3-adrenoceptor agonist on bladder function in a rat model of chronic bladder ischemia

Eur Urol. 2013